バーゼル合意がマクロ経済政策に与える影響についての考察
economy/0667 / 26 レス / 2002/11/15〜2002/11/19
- 1 :晩秋の名無しさん:2002/11/15(Fri) 02:15
- バーゼルの自己資本比率規制を逆読みしてみました。
大変大雑把な議論となりますが、叩き台として考えてください。
次の仮定の下で以下の議論を進めますが、総論的には間違った事には
ならないと思います。
(仮定1)銀行の資産は、企業向け融資と国債購入だけとする
(仮定2)直接金融の際にも決済は必ず銀行を経由する
(仮定3)仮定2に従い、自己資本比率は
「(自己資本+株式含み益)÷企業向け貸出」と定義される
(仮定4)自己資本比率の下限は全銀行で8%とする
(すなわち全銀行が海外業務を行っているものとする)
(仮定5)中央銀行は国債売買のオペにより金融政策を行うものとする - 2 :晩秋の名無しさん:2002/11/15(Fri) 02:16
- まず銀行による信用創造の過程を考える。
銀行は通常、法定準備率に従い預金を貸出に回し、それが経済活動を
通じて企業や家計の口座に振り込まれた預金が、現金預金比率に従い
再度預金される。この過程で信用創造が行われる。
つまり、自己資本比率の制約が無い場合には、通常理論的に考えられる
マネーサプライMorgとベースマネーの関係は次の式のようになる。
Morg=(cr+1)/(cr+rr)×B
=m×B
(rr…準備金比率、cr…現金預金比率、m…通貨乗数)
次に全銀行の自己資本を下記のように定める
C=全銀行の自己資本合計=∑(各銀行の自己資本)
自己資本比率の制約下では、以下の条件で企業向け貸出額Dが制限を受
ける
D=(C+株式含み益)÷8% ・・・(1) - 3 :晩秋の名無しさん:2002/11/15(Fri) 02:16
- ここで注目すべき点は、この貸出が信用創造過程を通じて再度預金され
たとしても、自己資本Cの制約を受けているため、銀行から再融資に回
らないと言う点である。その為、仮定1に従い、銀行は新たに増えた預
金を貸出には回さず、国債購入に振り向けることになる。
このDの制約下で定まる新しいマネーサプライをMbisとする。
Morg≦Mbisの場合、マネーサプライがMbisに達するまで金融緩和も行
えるし、金融引き締めも行える事になる。逆に、Morg>Mbisの場合、
中央銀行がいくら緩和をしても、預金残高が積みあがり、国債購入に振り
向けられる一方で、マネーサプライは増加しない。つまり、マネーサプラ
イがMbisに貼り付いてしまう。 ・・・(2)
このような状況下では、(1)の式により、株式の価格変動に対してマネー
サプライが敏感に反応する事になる可能性がある。株価が上昇する過程で
は株式含み益が増える事によりDが増加する。これがマネーサプライに影
響を及ぼすかは(2)に従う。Morg≦Mbisならばなんら影響をもたらさ
ないだろう。逆にMorg>Mbisの時、株価の下落に従いマネーサプライも
減少する。
この場合、中央銀行のベースマネーの増減に対して、実際にマネーサプラ
イが増減することなく、逆に通貨乗数mが伸縮する事になる。 - 4 :晩秋の名無しさん:2002/11/15(Fri) 02:16
- (結論1)株価が十分に下落し、自己資本が不足する経済においては中央
銀行の金融政策が無効となる。
また、仮定1と(1)より
(結論2)預金のうち企業融資に使用できない分が余剰資金が国債に向か
うため、債権相場は比較的高位に保たれる
更に、マネーサプライの上限が限られた状態なので、
(結論3)株価の上昇が伴わない状態で財政政策を行っても効果が少ない。
すなわち、投資乗数が減少する - 5 :晩秋の名無しさん:2002/11/15(Fri) 02:17
- (参考資料)株価と通貨乗数の関係
年月 株価 通貨乗数
1995.01 19166.93 11.82
1995.02 17896.45 12.40
1995.03 16379.33 12.29
1995.04 16094.02 12.36
1995.05 16124.13 12.32
1995.06 15055.99 12.54
1995.07 15581.47 12.10
1995.08 17237.90 12.18
1995.09 18016.90 12.25
1995.10 17697.24 12.09
1995.11 18109.46 12.06
1995.12 19350.63 11.19
1996.01 20715.37 11.32
1996.02 20530.25 11.67
1996.03 20787.74 11.64
1996.04 21800.85 11.67
1996.05 21885.60 11.71
1996.06 22059.64 11.85
1996.07 21574.16 11.57
1996.08 20575.87 11.68
1996.09 20831.76 11.75
1996.10 20964.92 11.69
1996.11 20826.71 11.59
1996.12 20018.02 10.73 - 6 :晩秋の名無しさん:2002/11/15(Fri) 02:17
- 1997.01 18888.01 10.82
1997.02 18321.48 11.24
1997.03 18216.27 11.11
1997.04 18510.36 11.28
1997.05 19672.07 11.31
1997.06 20528.41 11.35
1997.07 20253.48 11.13
1997.08 19016.90 11.21
1997.09 17931.01 11.27
1997.10 17150.55 11.21
1997.11 16568.18 10.93
1997.12 16133.17 10.13
1998.01 15792.66 10.36
1998.02 16804.25 10.71
1998.03 16895.76 10.66
1998.04 15941.46 10.75
1998.05 15635.94 10.77
1998.06 15575.65 10.77
1998.07 16370.93 10.69
1998.08 15136.49 10.73
1998.09 13888.01 10.77
1998.10 13380.82 10.66
1998.11 14418.23 10.71
1998.12 14338.79 10.17 - 7 :晩秋の名無しさん:2002/11/15(Fri) 02:17
- 1999.01 13957.57 10.39
1999.02 14416.36 10.61
1999.03 15029.17 10.44
1999.04 16514.55 10.44
1999.05 16706.13 10.41
1999.06 16969.12 10.56
1999.07 17861.31 10.30
1999.08 17631.13 10.35
1999.09 17703.97 10.35
1999.10 17827.32 10.33
1999.11 18277.58 10.26
1999.12 18715.15 9.14
2000.01 19271.28 8.68
2000.02 19691.45 9.90
2000.03 20209.50 9.60
2000.04 19350.35 9.62
2000.05 17367.77 9.89
2000.06 17052.68 10.11
2000.07 16671.08 9.93
2000.08 16480.47 10.06
2000.09 16243.52 10.14
2000.10 15221.06 10.02
2000.11 14760.45 9.89
2000.12 14310.51 9.42 - 8 :晩秋の名無しさん:2002/11/15(Fri) 02:17
- 2001.01 13767.52 9.40
2001.02 13331.55 9.82
2001.03 12840.68 9.72
2001.04 13436.09 9.71
2001.05 13843.80 9.67
2001.06 13115.45 9.67
2001.07 12305.98 9.47
2001.08 11336.42 9.51
2001.09 10092.18 9.17
2001.10 10169.31 9.03
2001.11 10522.36 8.83
2001.12 10456.62 8.33
2002.01 10434.65 7.89
2002.02 10189.63 7.98
2002.03 10918.47 7.61
2002.04 11260.62 7.37
2002.05 11658.25 7.72
2002.06 11261.62 7.84
2002.07 10236.69 7.82
2002.08 9706.41 7.80 - 9 :晩秋の名無しさん:2002/11/15(Fri) 02:49
- という訳で、コメントを求む
- 10 :晩秋の名無しさん:2002/11/15(Fri) 07:02
- 85くらいからうぷしてくれ
- 11 :晩秋の名無しさん:2002/11/15(Fri) 07:32
- 1.このスレの主は金融政策が資産価格に何も影響を与えないと考えているようだ。
しかし、金融政策は資産価格に影響を与える。たとえば、
物価が上昇するまで国債の買い切りオペを続けると宣言してそれを実行すれば、
おそらく最初に資産価格(為替、株価、地価など)が影響を受けるだろう。
2.このスレの主は銀行貸出の拡大抜きに金融政策の効果はないと考えているようだ。
しかし、銀行貸出は景気回復のための必要条件ではないという事実は、
ドラエモン氏のようなリフレ派が最もしつこく強調していることである。
http://matari.ichigobbs.com/cgi/readres.cgi?bo=economy&vi=0373&rr=70&fi=no
>僕に至っては不良債権処理による銀行貸出拡大は起こらないし、
>起こることが景気回復の条件ですらないと主張している。
http://matari.ichigobbs.com/cgi/readres.cgi?bo=economy&vi=0424&rr=77&fi=no
>世界大恐慌当時、日本でもアメリカでも、
>景気回復過程で最後まで減少続けていたのが銀行貸出。
http://matari.ichigobbs.com/cgi/readres.cgi?bo=economy&vi=0519&rr=769&fi=no
>銀行貸出なんか期待してません。
http://matari.ichigobbs.com/cgi/readres.cgi?bo=economy&vi=0624&rr=111&fi=no
>銀行貸出に期待するのは無理。
http://matari.ichigobbs.com/cgi/readres.cgi?bo=economy&vi=0630&rr=47&fi=no
>最初から銀行貸出の増加は期待していない。
昭和恐慌や米大恐慌のときには銀行貸出の拡大無しに景気が回復している。
以上の二点を無視した議論はナンセンス。
リフレ政策で景気が回復させることを前提に護送船団行政を改めるときには、
銀行のモラルハザードを防ぐために自己資本比率規制のような仕組みは必須だ
と考えられるがどうか?
とにかく「銀行貸出拡大なくして景気回復なし」という発想を
早く捨て去るべきだと思う。 - 12 :晩秋の名無しさん:2002/11/15(Fri) 08:49
- 案外○の金融恐慌論って使えるかもな。
誰か詳しい人語ってくれろ。 - 13 :歌舞:2002/11/15(Fri) 09:04
- エコノミストの最新号にも書いてる長って歴史家の人が『昭和恐慌』(岩波現代文庫?)って書いてる。
この人は○じゃないけど、当時の○の恐慌論をその本で展望している。ただしどう甘くみても当時の○はだめ。まず独占資本主義論(構造改革シバキあげ論、ただしシバキすぎて資本主義事態ドキュン)+反インフレ政策。読んでいるとあたまくらくらしてくる。あとこの本は漢字に強くないと読破できないが 藁 - 14 :晩秋の名無しさん:2002/11/15(Fri) 09:05
- 隠れマルキストのドラエモンに聞けばいいと思われ。
- 15 :1:2002/11/15(Fri) 10:26
- >>10
BIS規制自体1988からだし、Morg>Mbisへの転換点を
見れないかと思い参考表をつけてあります。>>11の言う
通り期待の影響もあるし、銀行側の行動も段階的だと思
いますので、なかなか綺麗な関係にはなりませんでした。
ただ散布図で株価と通貨乗数の動きを見ると、3つ位の
塊ができて、時代を追う毎に左下方向へのジャンプが見
られるので、あながちはずれでは無いかと。統計が得意
な人に補強をお願いしたいと考えています。 - 16 :1:2002/11/15(Fri) 11:08
- >>11
金融政策が期待を経由して資産価値に与える影響は理解して
います。が、現実問題として速水総裁のしみったれ発言と竹中
大臣の経済テロ発言を所与とした時に、期待に正の効果が現れ
る事があるのか(笑)。冗談ですよ。
企業の投資行動は、資産価値の上昇やなにやら、消費行動の改
善を原因として結果的に増えるものですから、貸出が増えるの
は最後だと思います。金融政策は、緩和方向はじっくりと、引
締め方向は急激に効果をあらわすという非対象性がありますし。
実態が伴わないと効果が出にくいと考えています。
むしろ、この議論では引締め効果について考えて欲しいです。
また、株価を外生変数として与えていますが、実際は景気動向
により株価は落ちるわけで、BIS規制下では引締め→株下落→
引締めというフィードバック過程が存在すると想像できます。
また、Mbisの制約で景気回復期にマネーサプライの天井に当
たってしまい、資産価値の上昇が十分でない時は回復しきれな
い可能性も考える必要があるかなと思います。この辺は、今後
の議論の中で精緻化できたら良いなと思っています。 - 17 :1:2002/11/15(Fri) 11:28
- (続き)
リフレ政策で景気が回復させることを前提に護送船団行政を改めるときには、
銀行のモラルハザードを防ぐために自己資本比率規制のような仕組みは必須だ
と考えられるがどうか?
自己資本比率規制のような仕組みの重要性について
言及するのは避けます。いずれにせよ、何らかの縛
りは必要でしょう。
ただ、加えた縛りが適切かどうかという視点は必要
だと思います。つまり、万が一の時の預金保護の為
に加えた制約で景気が悪化して、預金を保護しなけ
ればならない事態を生む事はナンセンスです。
自己資本比率の8%が適切なのか、あるいは護送船団
方式をとってきた銀行が、自己資本の拡充を怠って
来たツケかも知れません。いずれにせよ、BIS規制が
マネーサプライに制約を加えるのであれば、見直す
必要があるでしょう。
例えばこの議論の帰結からすると、日本が比較的大
きな影響を受けてしまったのが自己資本の不足に原因
があるのなら、これ以上の「意図せざる」引締めを
避けるために政策的に自己資本を積みます事が再重要
課題ではないかなと思う次第です。 - 18 :1:2002/11/15(Fri) 11:29
- それと、銀行のモラルハザードについて整理しているスレが
ありましたら教えてください。 - 19 :晩秋の名無しさん:2002/11/15(Fri) 20:50
- age
- 20 :晩秋の名無しさん:2002/11/16(Sat) 00:08
- >銀行のモラルハザード
って何ですか? - 21 :1:2002/11/16(Sat) 00:53
- >>11さんが書いている奴。
多分、銀行預金が全額保護され、その経営責任を
問われないなら、銀行は責任を持って貸出先の査定
をせずに、利益偏重で貸し出してしまい、不良債権
問題を起こしやすくなるという事じゃないかと思う
んだけど…。モラルハザードにも色々あるからなぁ。
それに、それを改めようと、ペイオフ解禁しようと
して金融不安が起きるなら、それは今改めるべき問題
じゃないと言う事じゃないかと。
逆に、自己資本規制を厳しく運用しすぎて、Mbis>Morg
となった時に、とりあえず貸し出しを減らそうとして、担保
がしっかりしている企業から順番に貸し剥がしをされる可能
性があるんだよな。自由主義で行くならこれを止める術が無い。
こういう逆選択の理論的可能性もモラルハザードの一種かな
と思う。これは現に発生している可能性が高い問題だと思う。 - 22 :1:2002/11/17(Sun) 17:33
- 他にもモラルハザードがあった。
銀行預金の保護がしっかりしている場合、預金者は
自ら投資先を決定する事なく、銀行に預けてしまい
直接金融市場が育たない。
ただ、これは心のそこで国民が国を信用している事
の裏返しでもある。 - 23 :晩秋の名無しさん:2002/11/17(Sun) 17:38
- 貸渋り・貸剥しなるものが激烈になるとすれば、
それだけこれまでの当局と銀行がインチキ会計やってたという証拠でしかない。 - 24 :1:2002/11/18(Mon) 18:11
- なんか反応が鈍いなぁ。
間違ってるなら間違ってる点の指摘して
くれるだけでもありがたいんだけど。 - 25 :晩秋の名無しさん:2002/11/18(Mon) 20:42
- 預金の全額保護による預金者側のモラルハザードは
金融機関を選別するインセンティブがなくなり、非効率的で市場から淘汰されるべき
金融機関をいつまでも存続させるっていう弊害をもたらす、といわれている。
直接金融云々はさほど関係ないでしょ。 - 26 :1:2002/11/19(Tue) 01:41
- いやさ、モラルハザード撲滅のために恐慌起こしちゃいかんと思うのよ。
正直、教条的に自由市場を信奉しちゃうのって、宗教なのよ。
別に統制しろという意味じゃなくて、両者のコストを比較して選別
すべきだと思うのよ。
http://www.google.com/search?hl=ja&ie=UTF-8&oe=UTF-8&q=pro-cyclicality&lr=
こういった研究成果も出てきているのに、なんか反応鈍いなぁ。